降ってきた雹の中に何か混じっていたので、拾って持って帰り、机の上に置いて溶けるのを待ちました。
中にいたのは大変小さなひとでした。
小指の爪程もありません。
私はレゴブロックで家をこさえてやりました。
小さなひとは赤だの青だの灰だのの色のブロックの家を見て、さも絶望したというふうに雹が溶けたあとの水に浸かっています。
どうやら、暑いらしいのです。
ためしに製氷機に水と小さなひとをいれてやり、冷凍庫の中にいれてやると、水の中で両手をあげて跳び跳ねていました。
表情や声などはわかりませんが、多分、喜んでいるのです。
喜んでいるのなら仕方ないので、私は黙って冷凍庫の扉を閉めました。
本当は小さなひとを耳の中で飼いたいと思っていました。

仕事から帰ってきた恋人に、小さなひとの入った氷を見せると、彼は飛び上がって私を叱りました。
何てかわいそうなことをするんだ!!!
そうはいうけれども、と困る私を放っておいて、彼は50度くらいのお湯に小さなひとの入った氷をチポンといれました。
小さなひとは、氷と一緒に溶けてしまいました。

恋人はしばらく悲しそうにお湯を見つめていましたが、私のことをぎゅっと抱き締めて、ペットの亀にエビをやり、ドリトスのタコス味をパキパキと食べてベッドで眠ってしまいました。

ドリトスのにおいのする恋人の横に寝転がり、小さなひとは何が好物だったのかな、と思って少し泣きました。